ゆったりできる談話室があります。待ち時間を過ごしていただけるように、
種々の図書や絵本・玩具を置いています。ご自由にお使いください。
小児から高齢者にいたるてんかんと、
小児の神経発達症の診療を
専門にしています。
※近年は障がいという言葉は使わず、
神経発達症といいます。
てんかんは治る病気です
てんかんは新生児から高齢者までのあらゆる年齢で発症する可能性がある神経疾患(脳の病気)で、全国に約100万人(全人口の0.8~1%)の患者さんがいると推定されています。
てんかんは正確な診断、適切な治療により70~80%の人は、発作のない生活を送ることが可能です。しかし、疾患に関する情報の不足や誤解・不適切な治療により、日常生活・社会生活で困難や不安・悩みを抱えている患者さんも少なくありません。
院内報でてんかんなどについての
情報を発信しています。
てんかん治療は発作を抑制することが第一目標ですが、発作を抑制することだけが治療ではありません。発作は抑制されても治療は長期にわたるため、薬や将来に対する不安だけでなく、子どもでは発達や学校、成人では就労・車の免許・結婚・妊娠、高齢者では他疾患の合併や介護、難治例では行動異常・知的障がい・親亡き後など、さまざまな問題や悩みがあります。
てんかん診療は、近年、著しく進歩しています。発作のコントロールだけでなく、日常生活の不安や悩みもお聞きし、一人ひとりの患者さんに寄り添い、生活の質が向上することを心がけています。
みんな違って、みんないい
子どもは成長する中で、運動や言語能力、社会性、認知機能など、様々な能力が発達していきますが、能力の発達に偏りがあると年齢ごとに様々な場面で問題が起きやすく、学校・仕事・日常生活に困りごとを抱えたり、人間関係に苦労することがあります。もちろん、特性は誰にでも多少はあります。また、特性があるからこそ活躍している人もたくさんいます。重要なことは、脳の働きに特性があっても、生活に支障がなければ神経発達症(発達障がい)と診断されないということです。
学校・社会生活に入ってから、“生きにくさ”を感じて、その背景に神経発達症があったと分かる人も多いです。つまり、特性=病気・障害ではなく、特性のために困っている状態を神経発達症と考えます。
神経発達症は精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)という診断基準では知的発達症・自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如多動症(ADHD)・限局性学習症・コミュニケーション症・運動症・その他に分類され、我が国の神経発達症の有病率は知的発達症1%、ASD3.2%、小児ADHD 5~6%、成人ADHD3~4%と言われています。
神経発達症の人は、行動パターンが多くの人と異なる場合がありますが、その理由は脳の働きに特性があるからで、本人の努力不足や親のしつけは原因ではありません。ただし、周囲の人の非難・注意などの関わりが不適切だと自信がなくなり、「何をやってもダメなんだ」「どうせできないんだから」などと自己肯定感が低くなり、神経発達症とは別の精神疾患や症状を引き起こしてしまうことがあります。これは「二次障害」と呼ばれ、大きな問題になることがあります。
一人ひとりの発達特性を理解し、環境調整と適切な配慮支援をすることで社会生活・日常生活において感じる困難が軽減されます。また神経発達症に関連するいくつかの症状は、投薬によって症状を緩和し生活しやすくすることができます。
みんな違って、みんないい!一人ひとりの発達特性・状況に応じたアドバイスを心がけています。
てんかんと神経発達症
てんかんとは、大脳の神経細胞の過剰な活動に由来する反復性の発作を主徴とし、様々な原因により起こる慢性の脳の病気であり、それに関連した種々の症状を示します。てんかん患者の20~60%が精神症状・神経発達症を示すと言われており、てんかん発症後に新たに神経発達症と診断されることもあります。
一方、神経発達症の方はてんかん発作の有無に関わらず脳波異常を認めることが多く(30~80%)、ASDの25~30%(知的障害が重度なほど高率)、ADHDの12~17%でてんかんを合併すると報告されています。
てんかんを有する神経発達症の方では、発作のコントロールだけでなく、日常生活での困難感が強く、治療には注意工夫が必要です。つまり、てんかんと神経発達症の両面からの治療、薬物の相互作用への考慮、生活アドバイスが不可欠です。
眠気や集中力・記憶力の低下、いらいらや不機嫌などの精神症状は抗てんかん薬の副作用が原因のこともあります。発作のコントロールだけでなく、日常生活の状況や不安や悩みもお聞きし、一人ひとりの患者さんに寄り添い、生活の質が向上することを心がけています。
てんかんと精神症状
てんかんを持つ患者さんは、さまざまな精神症状を併発し、それによる生活への影響が見られることがあります。てんかんを持つ患者さんに精神症状が現れる頻度は、20-30%と言われています。
てんかんに伴う精神症状の出現の要因としては、①てんかんが脳の病気であるために脳の機能異常として精神症状が現れる ②生活上のストレスが契機に精神症状が現れる ③抗てんかん薬の副作用として精神症状が現れることが考えられます。精神症状としては、うつ状態、幻覚妄想状態、心因性発作(解離症状)などがあります。
うつ状態や幻覚妄想状態に対しては生活上のストレス因子を調整したり、抗うつ剤や抗精神病薬や眠剤を使用することで治療しますが、抗てんかん薬の副作用でうつ状態や幻覚妄想状態が生じることもあり、その場合は抗てんかん薬を減量または変更します。心因性発作(解離症状)は、一見てんかん発作のように見えても、てんかん発作でない症状で、発作症状や脳波検査でてんかん発作の特徴が見られないものをいいます。主にストレスが原因で出現しますが、ストレス因子が明らかでない場合もあります。心因性発作に対しては、薬剤の効果は限定的で、発作と関連するストレスの調整が必要となります。